★自尊心
うつ病の患者は、自尊心を失っていることが多いという考えから、欧米のうつ病治療では薬物療法と並行して、カウンセリングによる患者の自尊心の快復が行われるのが一般的です。
自尊心、および自尊感情というのは、自己の存在やあり方を大切に思う感情をいいます。self-esteemという訳語があてられることが多いです。プライドや傲慢、驕り、および自惚れとは異なるものです。
精神医学的な意味での自尊心とは、ありのままの自分を受け入れ、誇りをもつということです。また日本語におけるプライドとは、自惚れや傲慢さを意味することがあり、自尊心とは区別する必要があります。
プライド(pride)は、肯定的な意味で使われないことが多く、キリスト教においても人間を罪に導く可能性があるとみなされる欲望や感情をあげた、「7つの大罪」とされています。
自己肯定感は人格形成や情緒の安定に重要であると考えられます。自尊心のない者は自分を信用することができません。そのため自分の能力に対してさえ懐疑的になってしまい、主体性や自信を形成することができず、何もできなくなってしまいます。
また、自尊心の欠如は、自制心(セルフ・コントロール)の喪失を招き、アルコールや薬物に対する依存症や、過食症・拒食症などの摂食障害といった精神障害を招くこともあります。
ただし、うつ病の治療においては過度の励ましは自尊心の快復でなく、単なるプレッシャーを与えるだけにならないよう注意することが大切です。プレッシャーは、事態をますます悪化させる恐れがあるからです。
★ソーシャル・スキル
うつ病の治療としては、従来の電気けいれん療法や近年その効果が認められつつある薬物療法が主なものですが、そのほか、抑うつ気分の背景にある認知のゆがみを自覚し、合理的な認知を形成する、認知行動療法などがあります。
また、最近、イギリスの小中学校などで重視されているものとして、社会技能またはソーシャル・スキルの育成があります。
ソーシャル・スキルとは、社会のなかでごく普通に他人と交わり、生活していくのに必要な能力のことです。心理社会的能力、ライフスキル、あるいは「生きる力」といわれることもあります。
国際連合の専門機関のひとつである、WHO(世界保健機関)では、社会技能を「日常生活のなかで出会うさまざまな問題や課題に、自分で、創造的でしかも効果ある対処のできる能力」と定義しています。
イギリスでは、PDHE(人格的、社会的健康教育)と称される教科を設定し、このような能力の育成を図っています。
社会技能には次のような能力が含まれます:
意思決定
問題解決能力
創造力豊かな思考
クリティカルに考えていく力
効果的なコミュニケーション
対人関係スキル - 自己開示、質問する能力、聴くこと
自己意識
共感性
情動への対処
ストレスへの対処
これらの能力が発揮された結果、以下の能力が可能となります:
(1)その場の雰囲気が分かる。
(2)自分の発した言動を相手がどのように受け取るか想像出来る。
(3)自分の考えを、上手に相手に伝える事が出来る。